「食べログは気にしてませんよ」と店主は言った

 ネットのニュースには数か月位ごとに、「食べログに信ぴょう性はあるのか?」 というような記事が出ますね。点数を参考に店を選んだがまるで期待外れだったとか、料理のクオリティが書き込み通りじゃなかったとか、いろいろ恨み節が並んでいるやつです。

 「水が高い」、「他の席の客よりも皿の出方が遅い」、「隣の客の香水が強い」、「スタッフの失礼な態度に腹が立った」などなど、もっともな意見、言いがかり、不可抗力までトピックスの中身は様々です。そもそもお店の評価はお店の混み具合でもまた評価する客の年齢やライフスタイルでも変動しますので、色々な意見があって当然なのです。あくまでも参考程度にと、食べログ側も言っていますね。たいていの記事も鵜呑みにしてはいけませんよと結んでいます。

 一方、評価される側であるお店は気になるでしょうね。人気店であればあるほど店に関する書き込みは日々増えていきます。もちろんお褒めの言葉ばかりではありません。私のよく行くお店の何軒かの主人も、私が「食べログの点数いいですね」というと、「食べログは見ないようにしているんです」とか「私、コンピューターはまったくやらないんで」などと超然としていらっしゃいますが、本心はそうではないでしょう。私がもしそんなふうに日々評価される環境で仕事をしていたら、気になって気になって、いつも口コミ欄を見ちゃいますもん。

 以前面白い事件がありました。とても気に入って通い始めた寿司屋の大将が、私の友人が投稿した食べログの記事(とても高評価で、なおかつ的確な記事でした)に関して、恐縮しながら私に話しかけてきました。「先日、ご一緒にいらしたお友達の記事がどうやら当店とは違う店に書き込まれているようなんです」

 どうやら近隣でなおかつ同じ名前の別の寿司屋に間違えて書き込んでしまったらしいのですが、日ごろから寿司ネタの追及一筋で、とてもインターネットなど興味もなさそうな顔をしている大将が、他店に載った投稿をよくぞ発見したものだと驚きました。

 そのことがあってから、お店の評価はちゃんと真摯に愛情を持ってやらなくてはと思いました。私は相手の顔を思い浮かべながら口コミを投稿しようと。